持続可能な「未来のくらし」の探究者

世界中をバイクとバイオディーゼルカー「バスコ5号」で地球70周分を旅した山田周生さん。現在は、釜石市橋野町を拠点に、釜石の自然再生エネルギーを利用した「橋野ECOハウス」を運営するなど、自然環境を大切にしながら持続可能な「未来のくらし」を追求しています。

学生時代、麻雀に明け暮れる学友たちを横目に「自分は本当にこのままでいいのか?」という疑問を抱き、自分の人生で本当にしたいこと、成し遂げたいことは何なのか考えた周生さん。その結果出た答えは、「バイクで好きなだけ走ってみたい」というものでした。その想いから周生さんは、まずは日本各地の様々な場所をバイクで旅をし始めますが、「日本ではすぐに目的地にたどり着いてしまう。より広い場所で旅がしたい。」と感じ、周生さんは旅の舞台を世界に移します。

世界中を旅する中で、バイクで走るだけではなく風景写真を撮ったり、出会った人に密着で取材をしたりしました。旅や取材を続ける中で「食、エネルギー、暮らし」の今後を考えたときに、「自分はどう暮らすべきか?」を考えるようになった周生さん。その中で周生さんの知っているオアシスや村が砂漠化の影響でなくなってしまったり、氷河が溶けたりしている地球温暖化の現状を目の当たりにし、「温暖化防止や地球環境を守るために自分にできることは何か」を考えている最中に出会ったのが、天ぷら油を利用したバイオディーゼル燃料でした。  バイオディーゼル燃料を、テストとして旅でも使っていく周生さんは、遂にTOYOTAのレースでラリードライバーとして、世界で初めてバイオディーゼル燃料でラリーの世界大会に出場します。その大会は「世界一過酷なレース」と言われており、砂漠地帯を高速道路よりも早いスピード走ることもあるため、突然道が消えたり、場所によってはテロリストから襲われる危険性もあるため、リタイアする人が8割、死者も毎年出るような危険なレースです。周生さんは過去にレースに出場し完走して、一度は3位という好成績を修めたこともあります。その経験からバイオディーゼル燃料の優位性を実感した周生さんはその後、トヨタのランドクルーザーにバイオディーゼル燃料を搭載し、一度もガソリンスタンドで給油することなく、出会った人々から廃油を貰って世界一周を達成しました。

日本を旅しようと岩手県花巻市を訪れた周生さんを襲ったのは、東日本大震災でした。「自分にできることがあれば」と釜石や沿岸部を支援するために物資を運搬しました。震災時はガソリン不足のみならず、ガソリンを給油するためのガソリンスタンドが電気が通じておらず使えなかったため、3000キロ無給で走れる周生さんのバイオディーゼルカーが大活躍しました。

さらなる支援として、周生さんは「菜の花大地復興プロジェクト」を立ち上げます。菜の花は塩分を除去する性質を持っているので、津波の影響で塩分を含んでしまった土壌を回復させることができます。それだけではなく、菜の花は緊急時にはエネルギーとして対応できるため、次の災害に備えることができます。そのため、ボランティアの方々と菜の花を植え、なたね油を搾り、今度は仮設住宅に住む人たちの雇用や交流を促す場として、ラベル貼りや畑の管理などの作業を提供し、菜種油「油いっこ」として産直などで販売して地域の収入にする、という活動も行いました。

釜石市は世界でも特異なリアス式海岸の地形を有しています。山と海が接近したことで生じる高低差で水力発電、晴れの日が多いため日照時間が長く太陽光発電、風が強く吹くため風力発電にも適しています。さらに森林も多いので、バイオマスエネルギーとしても利用することが出来るなど、周生さんから見た釜石はまさに、自然再生エネルギーの宝庫でした。そして、そんな釜石市の自然再生エネルギーを活かし、人が集える場所として「橋野ECOハウス」を建てました。周生さんのエコハウスには、風力発電のための仕組みや、太陽光発電を行うためのソーラーパネルなどがあり、自然エネルギーによって電気をまかなうための工夫が随所に施されています。

世界中を旅し、各国の地球環境を保全するための取り組みを見てきた周生さん。「地域の人たちと足並みをそろえながら、暮らしを単純化することで地球にダメージを与えない、シンプルだけど貧しくない、「気持ちのいい暮らし方」を実践し、その活動を一緒に行い、寄り添っていくことが、私の思う『ボランティア』です。」と今後の活動への想いを語ります。

「せっかく釜石に来るのだったら、ただ話を聞き、理解した気になって終わり、ではなくて、五感で釜石を感じて理解して欲しいですね。時間を使って、自分に興味をもって話を聞きに来てくれる人がいることに嬉しさを感じる一方で、釜石の魅力を知らないまま帰ってしまう人が多いことが少し残念に感じます。」と周生さんは話します。自分の身体で実際にその地域を体感することが、その地域やそこで暮らす人の理解に繋がることを周生さんは伝えています。