シャッター商店街復活を目指すリノベータ― 

「釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクト」代表、一級建築士の宮崎達也さん。震災ボランティアをきっかけに「釜石の復興に建築の能力を生かして携わりたい」という想いから、釜石大観音仲見世通りを拠点に、様々なプロジェクトを展開しています。

宮崎さんは三重県鈴鹿市出身で、株式会社宮崎建築事務所の代表取締役を務めています。東日本大震災発生当時は鈴鹿青年会議所に所属しており、岩手県の被災地を支援するための視察で、釜石を含む沿岸地域を訪れました。その後、瓦礫を片付けるボランティアや、炊き出しを行いましたが、現地まで来るのに、お金や時間かかりすぎると感じました。そこで「被災地には復興のために建築士が必要になるはず。仕事があれば住んでボランティアも出来るのではないか?」と考え、ボランティアで知り合った現地の青年会議所メンバーに相談しました。そこで、釜石の設計事務所を紹介され、翌年2012年に釜石へ引っ越して暮らすことを決めました。  それから数年後、建築の仕事と、震災ボランティアを通じて、そして釜石で実際に過ごしてみて、宮崎さんは「これからはボランティアよりもまちづくりが必要なのではないか。街が再生して、新しい施設が増えても、経済が破綻してしまっては意味がない。」と、考えるようになったといいます。観光を通じた復興を考え始めた矢先、釜石大観音のふもとにある仲見世通りを見つけました。初めて仲見世通りを見た宮崎さんはシャッターが閉まっている店がほとんどだったものの、店舗のデザインが一定のルールで統一されていることを発見し、興味を抱いたことから、仲見世通りを活動拠点にすることを決めます。

 「釜石〇〇会議」で「この商店街を自分の建築の力を役立てて観光地として再生したい」という想いから釜石大観音仲見世リノベーションプロジェクトを提案した宮崎さん。仲見世通りを再生させるための方法を模索する中、他地域の取り組みも学びました。その際、各地でシェアオフィスが増えていることに気づいた宮崎さんは、いつしか「自分もシェアオフィスを作ってみたい」という想いを抱くようになります。そんなとき、 釜石ローカルベンチャー事業が始まり、事務局であるパソナ東北創生が事務所を探していること、また、釜石ローカルベンチャー募集にあたり、受け入れ先が必要である、という話を聞いた宮崎さんは、ローカルベンチャーの利用する事務所として、シェアオフィス「co-ba」設立を決意し、2018年5月に「co-ba kamaishi marudai」をオープンさせました。そして、同じ年、仲見世再生に取り組むローカルベンチャーが2名(神脇隼人さん、東谷いずみさん)やってきました。仲見世通りをさらに盛り上げるため、神脇隼人さんと合同会社sofoを立ち上げ、2019年7月、こだわりのコーヒーとカレーやパエリアなどの料理が楽しめる「sofo cafe」もオープンさせ、東谷いずみさんが運営する、ゲストハウス「あずま家」の立ち上げを支援しました。

宮崎さんは今後、さらに仲見世を活性化させる方法の一つとして「仲見世商店街を『みちのく潮風トレイル』の拠点として『ゼロデー』」を過ごすための場所にしたい」と語ります。  潮風トレイルは青森から福島までの太平洋側のルートを結び、海、山、川など東北の自然を自らの脚で体感できるプログラムで、全行程で約2カ月かかります。トレイル参加者は通常キャンプ泊を行うものの、月に1回ほどホテル泊を行う習慣を持っていることが多く、その日は身体を休めるために歩く距離が0であることから、「ゼロデー」と呼ばれています。釜石市はみちのく潮風トレイルのルートのほぼ中間地点に位置しており、宮崎さんは「ゼロデーを過ごすために釜石は最適な場所にあるのではないか。」と考えています。

また、釜石に支援活動に来てくれた人たちは、そのほとんどが拠点の近くで活動することが多く、今は釜石の各方面に拠点があり、活動内容も違います。釜石大観音仲見世を盛り立てようと移住してくれる人たちの拠点を一か所に集中させ、コミュニティーを作ることで、情報交換やコミュニケーションの取れる場として、宮崎さんはシェアハウスの設立も考えています。

「釜石をはじめとする、いわゆる地方には、『稼ぐことだけが働く目的ではない』という価値観がうまれつつあると感じます。」釜石に住んで、山や海などの自然に囲まれながら、近所の人たちと助け合って生活することの温かさを体験しました。都会にはない公共性や社会的意義の高い仕事の在り方。そんな、昔からあるようで、現代の人にとっては新しい働き方が釜石にあるのではないでしょうか。