復興を次世代につなぐリーダー

まちづくりのために地域体験プログラムのコーディネートや子どもへの地域教育を行っている、「三陸ひとつなぎ自然学校」。地域の人たちからは「さんつな」の愛称で親しまれています。その「さんつな」立ち上げに携わり、現在、代表理事を務める伊藤聡さん。釜石の振興に懸ける熱い想いを次の世代に引き継ごうと尽力しています。

 釜石出身で、高校卒業後仙台へ一旦出ましたが、「将来は地元に戻ってきたい」という想いを持ち続けていた伊藤さん。釜石に戻ってきてからは、商店街振興の活動をする傍ら、釜石と大槌の有志の若者で結成した「小さな風」で、子供向けのイベントを行っていました。様々な活動をしながら伊藤さんは、「釜石には観光振興やまちづくりというものが必要なのではないか。という気持ちを抱き始めるようになったり、「@リアス」というNPOでまちづくりの活動にも携わるようになりました。そんな時に、伊藤さんと同じように、まちづくりや観光の活動に力を入れようと取り組む、旅館「宝来館」の女将さんと出会い、伊藤さん自身も宝来館でフロントマンとして働きながら、漁業体験や農業体験のコーディネートや、漁業体験と宿泊をセットにしたプランを宿泊予約サイトでの販売をしていました。

伊藤さんが宝来館で働き始めて1年後の2011年に、東日本大震災が釜石を襲いました。 津波が迫ってくる様子を見て、地域の人や当時の宿泊者と共に宝来館裏の山に逃げ、九死に一生を得ましたが、瓦礫に覆われ変わり果ててしまった街の姿を見た伊藤さんは、「釜石はもうだめかもしれない。」と絶望したと言います。そんなとき伊藤さんが目にしたのは、釜石の復興のために活動するボランティアの人たちの姿でした。自衛隊や警察官、ボランティアの人たちが活動する姿を見て、伊藤さんは、希望を取り戻します。「宝来館を復活させたい、でも宝来館だけ復活させても意味がない。まずは街を再建させなければ。」そのために伊藤さんは、自身の経験を活かして、ボランティアと観光を融合させたボランティアツーリズムで人を呼ぶことで、釜石を振興させようと試みます。「地域の人と外の人をつないで、釜石ファンを増やすことが重要だと考えました。その想いから立ち上げたのが、『三陸ひとつなぎ自然学校』です。」

「三陸ひとつなぎ自然学校」という名前には、活動を通して街が「つながっていく」、人と人とを「つなぐ」という意味が込められています。伊藤さんは現在、釜石を「学びのある観光地」として盛り上げて行くために、観光コーディネートに尽力しています。また最近は、観光振興だけではなく、釜石のために活動する未来のプレイヤーを増やしていけるように、子どもたちに地域の魅力を実感してもらう教育に最も尽力しています。  例えば、釜石の豊かな自然を活かした海遊びや川遊び、「子どもが地元のステキな大人と出会う地域旅」がキャッチコピーの「かまとらJr.」というプロジェクトです。地元で活躍する人と共に漁業体験などが出来ます。この他にも、中高生向けのボランティア活動を展開したり、他県の大学と連携したイベントを開催するなど、子どもたちと地元の大人たちが繋がれるのはもちろん、子どもたちが地元の魅力を再発見することを意識しています。伊藤さんは地域教育を通して、「子どもたちが地元に愛着を持ち、自分たちのバトンを渡せる存在になってくれたら嬉しいです。」と語します。

 伊藤さんは今後、「まずは地元の子どもたちが自分の地域のことを知って、釜石外から来た人に学びを発信できるよう、地域教育を通じてサポートしたいです。」と、釜石が「学びが蓄積されていく場所」となることを目指して尽力していくことを明らかにしました。  以前は「東京や都会に近づける街づくり」が主流でしたが、今は「地域らしさを魅せる街づくり」が重要という人も増えています。「釜石は『どこか懐かしいな』という気持ちを随所で抱ける地域です。『古き良き日本』を体験しに京都などの観光都市に行くのもいいけれど、是非『地域性からくる懐かしさ』を体験しに釜石にも来て欲しいです。」と語ります。